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この記事は2018/12/13に修正を加え、アップデートしています。

皆さんはいつもスーパーで買う野菜と有機野菜の違いは?と聞かれたらどう答えるでしょうか?

農薬を使ってない野菜かな?聞いたことはあるけれど詳しくは知らないなあ、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

農業には農法というものがあり、それには様々な種類が存在します。

今回はそんな農法の違いについて、現役兼業農家のわたくし「たっさん」がご紹介していきたいと思います。

是非、最後までお付き合いください!

吹き出し/ライターたっさん

僕も農業を始めるまではそんなことを全く気にしたこともありませんでしたし知りもしませんでした。これが知るとなかなか面白く、自分の理想にあった野菜を購入する上では知っておいて損は無いポイントです!

農法ってなに?それぞれの違いは?

スーパーに行くと様々な野菜が並んでいますが、何も書いてない普通の野菜の他に「有機栽培」や「無農薬」など様々な表記を目にすることがあるかと思います。

実は表記によってそれぞれ栽培方法が異なり、細かなルールが設けられているのです。

まずは分かりやすく表にしてみました。

肥料・農薬 コスト・安全性
慣行栽培 化学肥料・使用 普通・農薬の使用量は多め
特別栽培 化学肥料もしくは有機肥料・使用 少し高め・農薬は50%減が基準(慣行農法に比べて)
有機栽培 有機肥料・天然系の農薬を使用可 やや高め・上記の農法に比べると農薬の使用量は大幅に減る
自然栽培 無施肥・不使用 高め・肥料、農薬ともに不使用
自然農 無施肥・不使用 高め・肥料、農薬ともに不使用

代表的な3つの栽培方法をご紹介していきましょう。

慣行栽培

現在の日本で一番普及しているのが慣行栽培です。スーパーなどで特に表記がないものや~~産とだけ書いてあるものは、ほとんどがこの栽培方法で作られています。

農薬を用いて虫や病気を防除し、化学肥料を用いて栽培を促進します。

農薬の使用回数などは法律で定められていますが、地域や農産物によっても使用回数などが変わります。

大量生産に向いた農法で、価格も安価なものが多いのが特徴です。

吹き出し/ライターたっさん

僕の感想では、農薬を危険なものと考えた場合はそのリスクが高く、食味も頼りなく味が弱いかなと感じます。

特別栽培

従来の慣行農法と比べ、農薬の使用量と化学肥料の窒素成分を50%以下に抑えて栽培したものが特別栽培です。

国が定めた細かなガイドラインがありますが、法的な強制力や罰則はなく国による認証制度もありません。

50%以下というのが基準なので、農家さんによっては農薬90%減、有機肥料100%というような場合もありますしガイドラインギリギリまで農薬を使う場合もあります。

地域によってもガイドラインが異なり少しわからづらい部分があるため、特別栽培という栽培方法自体があまり知られていないように感じます。

減農薬野菜や減化学肥料栽培などとも呼ばれていましたが、現在は特別栽培という表記で統一されており、慣行栽培の野菜と比べると価格は少し高めになります。

吹き出し/ライターたっさん

慣行栽培に比べて農薬のリスクは低いものとなります。肥料も有機肥料を用いる場合も多く、慣行栽培や水耕栽培などに比べるとしっかりとした野菜の風味を感じることができるのではと思います。

有機栽培

有機肥料を用い、無農薬、もしくは特定の農薬だけを用いて栽培された野菜。

国による厳しい認証制度があり、農林水産省が定めた有機JASの資格を有する農家さんだけが名乗れる栽培方法です。

有機肥料100%、無農薬で野菜を栽培しても有機JASの資格を持っていない人は野菜を販売するときに有機野菜やオーガニックの表記をすることが出来ず、違反した場合は法律による罰則があります。

有機栽培には細かな決め事が多く、有機JASの資格を取るのはとても大変です。その分価格は高くなりますが、安心できる高い品質を誇っています。

吹き出し/ライターたっさん

農薬や化学肥料のリスクはほとんどありません。土の力を感じる濃厚な食味を感じることができます。

有機栽培、有機野菜とは?

有機栽培についてもう少し深く掘り下げてみましょう。

有機栽培、有機野菜、オーガニック、と表示するには有機JASの資格が必要です。資格を取るには非常に手間がかかるので、品質や安全性には信頼を持つことができます。

資格を取るためには、「一定の農場や畑で一定期間(3年)以上農薬を使用せず、化学合成薬品を使用した肥料を使用していないこと」と定められており、栽培にあたって必要な農業資材にも細かな決まりが設けられています。

「よし、今年から農薬も化学肥料も使っていないから有機栽培の野菜として売り出そう!」

というわけにはいかないのです。

「有機野菜」「オーガニック」と表示するには最低でも3年以上かかります。厳しい基準をクリアして初めて有機野菜の表示ができるようになるのです。

有機野菜=無農薬野菜ではない

有機野菜と聞くと無農薬のイメージがあるかもしれませんが、有機JASが定めた天然系の農薬であれば使用が可能です。

つまり必ずしも「有機=無農薬」ではないのです。

ですが有機JASの決まりにおいては指定の農薬を必ず使わなければいけない、というわけではないので農家さんによっては完全に無農薬の場合もあります。

少しややこしいですが、有機野菜でも認められた農薬を使っている場合とまったく使っていない場合があり、農薬を使っていてもその使用量は状況や農家さんによっても変わります。

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実際に僕の周りで有機JASの資格を持っている農家さんは完全無農薬の場合がほとんどです。

そして有機JASの資格を持っていなくても100%無農薬の有機栽培をしている農家さんもたくさんいます。

吹き出し/悲しんでいる男性

僕が専業で農業をしていた時はまさしくこの状況でした。農法は有機農法で完全無農薬なのですが、有機栽培の表示はできません。

しかしその場合は「栽培期間中、農薬、化学肥料不使用」の表記が認められています。この表記がある場合は有機農法で無農薬の場合が多くあるのではないかと思います。

無農薬野菜と表示されている野菜は、農薬は使っていなくても化学肥料の使用に制限はありません。表示にあたっては特別栽培のガイドラインが適用されています。

このように、有機野菜と無農薬野菜は似てるようで実は全く違うものなのです。

有機肥料とは?

動物や植物由来の有機物を原料にした肥料が有機肥料。対して鉱物や化学成分などの無機物を原料として化学的に作られた肥料を化学肥料といいます。

有機肥料は土壌内の微生物が肥料を食べてそれを分解し、初めて効果が表れてきます。そのため効果はゆっくりしたものとなりますが、持続性が長く野菜もゆっくりと育っていきます。

対して化学肥料は水に溶けて植物の根からすぐに吸収されるために即効性があります。ですが使い続けていると土壌内の微生物は減少していき、痩せた土となっていってしまいます。(使い方にもよります)

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土に負担をかけることなく、土から作っていくのが有機農法ともいえるでしょう。

さらに有機栽培に用いる有機肥料には様々な種類があり、大きく2つに分けることができます。

それは動物性肥料と植物性肥料です。

動物性肥料

代表的なものは鶏や牛などの家畜のフンを発酵させて再利用したもので、野菜の成長に必要な窒素分が高く有機肥料の中では比較的即効性がある肥料です。

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土壌内の微生物にたっぷりの栄養を与えてくれるので微生物の動きが活発になり、分解が進んで野菜が肥料の栄養を吸収しやすくしてくれます。そのため甘さや風味が強い濃厚な味の野菜ができる傾向にあります。

ですが、フンを出す家畜はどんな飼料を食べているのか?例えば化学的なものや遺伝子組み換えの植物から作られた飼料を食べていた場合、どれだけの影響があるのか?

というような側面もあり、こだわる農家さんの中には信頼できる業者さんからしか肥料を仕入れないという方もいます。餌にこだわった平飼いの養鶏場から仕入れた鶏糞などは最高の動物性有機肥料と言えるでしょう。

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いい肥料は当然コストも高くなってしまいますし、野菜を作る面積が広ければ広いほど肥料はたくさん必要になってきます。肥料代というのは農家さんにとっては大きな出費となるので、どこまでこだわるかは農家さん次第かもしれません。

植物性肥料

代表的なものは米ぬかや菜種油のカスを発酵させて再利用したものです。

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有機肥料のなかでもさらにゆったりとした効き目ですが、そのぶん野菜がゆっくりと育つために肉質が緻密になり、動物性に比べて優しい味わいになる傾向があります。

こちらも、米ぬかを取る前の米はどんな栽培方法が用いられていたのか?などのこだわりを持って肥料を選ぶ農家さんがいます。

しかしこだわった肥料から作られた野菜はコストの面では高くなってしまうのも現実です。肥料にもとことんこだわりたいけれ、その結果野菜の販売価格へと影響して価格が高いと売れ残ってしまうなんて場合も。

吹き出し/ライターたっさん

そのあたりの需要と供給のバランスはは農家さんとしても難しいポイントとなっているかもしれません。生産方法にこだわったいい野菜が高いというのは、農家さん側としては仕方のないこと。そういった野菜を理解して購入してくれるお客様は農家さんにとってとてもありがたい存在なのではないかと思います。

さらに自然に近い環境を目指した栽培方法

有機栽培は有機肥料を用いますが、肥料を全く用いない栽培方法も存在します。

それが自然栽培や自然農と呼ばれる農法です。

自然栽培

完全無農薬、そして無肥料で野菜を育てる栽培方法です。

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肥料がなくても野菜が育つの?と思う方も多いのではと思いますが、しっかりと時間をかけて土を作り、手間暇をかけてあげれば野菜は育ちます。

土作り、そして種作りから何年も時間をかけて行うため決して効率的な農法ではありません。さらに慣行農法と比べると収量は少なくなるのに手間は倍以上かかるため、当然価格も高くなってしまいます。

ですが植物と土そして自然の力を利用して作る野菜は、力強く滋味深い味わいの野菜となります。よりナチュラルで安全性の高い野菜を求める方にはピッタリの農法かもしれません。

自然栽培には国による明確な基準や認証制度がないため、農家さんの自己申告制になります。

1年前まで農薬を使っていた畑では有機JASの資格を取ることはできませんが、自然栽培は自己申告なので問題ありません。

その場合は自然栽培1年目というような表記をする農家さんが多いようです。

自然農

様々ある農法の中でも最も手のかかる、そして最も哲学的な農法が自然農と言えるでしょう。こちらも国による明確な基準や認証制度はありません。

自然農の特徴は完全無農薬、無肥料、そして不耕起というところにあります。不耕起、つまり畑を耕すこともしない農法です。

吹き出し/ライターたっさん

さすがに野菜なんか育たないでしょ?と思うのではないでしょうか?僕もそうでした。実際に僕の周りには何人かの自然農を取り入れている農家さんがいるのですが、見事な野菜が育っているので驚きです。

自然農ではいわゆる雑草を利用します。

雑草の根に伸びてもらい、土を耕すという方法を取るのです。草を敵とみなさず友として利用する自然農の畑は、草むらの中に野菜が生えているようなワイルドな状況がみられることがあります。

さらに自然農では作った野菜から種を取ることを基本としています。野菜の記憶は種に受け継がれ、次の年にはその土地に合った育ち方をしていくそうです。

そうやって何年もかけて土そして種から野菜を作っていき、自然の力を最大限に利用するのが自然農です。そして個々の農家さんの畑や自然に対する考え方がダイレクトに反映される哲学的な側面を持つ農法でもあります。

自然農の畑で作られる野菜は、その畑でしかとれない力強くワイルドでオリジナルな野菜が多いのが特徴です。

価格はいままでご紹介したどの農法よりも高いものになるかと思いますが、自然そのままの味わい、そして農家さんの思いに触れて農家さんを応援してあげたい!という方には是非おすすめしたい農法です。

大切なのは農家さんとの信頼関係

日本には有機農家さんがどれくらいいるかご存知でしょうか?

日本全体の農家さんの数に対して、有機農家さんはわずか1%にも満たないと言われています。自然栽培や自然農の農家さんともなれば、さらに少なくなるでしょう。

また、日本は農薬大国でもあります。

耕作地に対しての農薬の使用量は、なんと世界一なのです。

高温多湿の気候や人口密度の問題など様々な理由がありますし、農薬がすべて悪いとは言えません。

ですが食の安全が特に求めらてれる今、農薬の問題や大量生産、大量消費や大量廃棄の現実は避けて通れない問題なのではないでしょうか?

野菜の栽培方法やその背景、さらには農家さんの思いなどを知り、生産者と消費者としての信頼関係を築いて野菜を選ぶ、というのも今の時代にあった野菜の選び方なのではないかなと思います。

吹き出し/ライターたっさん

慣行栽培、有機栽培、自然栽培、いろいろ言葉はありますが、言葉だけで選ばずに「自分がどんな野菜を食べたいか、子供や大切な人にどんな野菜を食べさせたいか?」を考えてみるのもいいかもしれません。

最後に

農法やその違いについてご紹介させて頂きました。

こういった背景や違いを知ることで日々の野菜選びが少し楽しく、そしてありがたいものになれば幸いです。

様々な農法がありますが、どれが正しいというわけでは決してありません。どの農法の農家さんも日々努力や苦労を重ねて野菜を作っていることと思います。

たくさんの中からただ選ぶのではなく、生産者の気持ちやこだわりに触れてみるとまた新しい気持ちで楽しい食卓を囲むことが出来るのではないかと思います。

ご自身が求める野菜を探すのに、少しでもお役に立てたなら嬉しいです。